[コラム]北陸の気候から考える地球温暖化

梅雨の雨の降り方と温暖化

今年は西日本を中心に記録的な早さで梅雨入りしました。熊本県では5月としては記録的な雨量を観測するなど梅雨入り早々大雨となっています。近年の梅雨の天候はどのような傾向があるのでしょうか、また地球温暖化との関係はあるのでしょうか。

村田 光広 氏(むらた みつひろ)
株式会社村田気象予報士事務所代表取締役
1968年生まれ、気象予報士
【テレビ出演】
福井テレビ「ライブニュースイット」(月〜金曜日)

❶ 大雨をもたらす梅雨前線

夏にむけて、北にある寒帯気団(オホーツク海気団)と南にある熱帯気団(小笠原気団)が、季節とともに入れ替わろうとすることで発生する前線が梅雨前線です。この梅雨前線に向かって南から熱帯の暖湿な空気が流れ込むときに海面から蒸発した大量の水蒸気が前線付近に運び込まれます。この湿った空気は前線付近で強い上昇流で持ち上げられ強い降水帯が形成されます。
北陸地方の平年の梅雨入りは6月11日頃、梅雨明けは7月23日頃。平年の7月の降水量は、北陸地方の各地で200㎜以上に達します。

❷ 梅雨後半の大雨が増えている

気象庁気象研究所が梅雨の長期変化を調べた結果を紹介します。
図は1901~2012年の期間で西日本の降水量が何%増減したかを示しています。梅雨の前半(6月上~中旬)に減少する一方、梅雨の後半(7月中~下旬)に増加しています。特に日本海側で顕著(約60%増)となっています。同様の傾向は東日本にも見られます。
つまり、約100年の変化を見ると、梅雨の後半に大雨・集中豪雨になることが多くなっているのです。
平成16年7月の福井豪雨は7月18日。平成23年7月新潟・福島豪雨は、7月26日から7月30日にかけて発生しました。

❸ 梅雨の変化は地球温暖化の影響なのか

気象庁気象研究所の温暖化シミュレーションによると、地球温暖化に伴い、21世紀末には梅雨期の降水量は後半(7月中~下旬)を中心に増加し、梅雨明けが遅れると予測されています。要因としては、温暖化により大気中の水蒸気量が増加することで梅雨前線に流入する水蒸気量も増加するからです。さらに、日本上空の偏西風の北上が遅れることも予測されていて、梅雨前線の北上も遅れることが指摘され、結果、梅雨明けが遅れるのです。
梅雨明けが遅れるということは、夏への季節移行が遅くなり、四季の変化にも繋がります。

❹ 今後警戒すべきこと

地球温暖化に伴い大気中の水蒸気量は増加するため、長期的にみれば、大雨や集中豪雨は増加する傾向にあります。今後も、この傾向は続くことが予想され、特に梅雨期の土砂災害や河川の増水・氾濫のなどの災害が増える恐れがあります。中でも、梅雨の後半(7月中~下旬)の大雨災害は要注意です。この時期の大気は熱帯並みに多くの水蒸気を含み、梅雨前線が停滞すると同じ場所で数時間大雨が降り続くことがあります。

<豆知識> 線状降水帯

次々と発生する発達した雨雲(積乱雲)が列をなし、数時間にわたってほぼ同じ場所を通過または停滞することで作り出される、線状に伸びる長さ50~300km程度、幅20~50km程度の強い降水域のことです。2020年7月の九州豪雨や2018年の西日本豪雨など、近年の大雨の要因の一つとなっていて、線状降水帯による多くの甚大な災害が生じています。
新しい気象レーダーによる監視能力強化や予測技術の開発が進められていますが、線状降水帯の事前予測は難しいのが現状です。