[コラム]北陸の気候から考える地球温暖化

温暖化で変わる「100年後の北陸の冬」

記録的な暖冬、数年に一度の豪雪、近年の天候は異常気象となって現れることが多いのです。地球温暖化が進行した場合、北陸の冬の天候はどのように変わるのでしょうか。

村田 光広 氏(むらた みつひろ)
株式会社村田気象予報士事務所代表取締役
1968年生まれ、気象予報士
【テレビ出演】
福井テレビ「ライブニュースイット」(月〜金曜日)

ひと冬に降る雪の量は減る

地球温暖化により、ほぼ確実に減ると予測されているのが、シーズンに降る雪の総量です。地球温暖化によって5℃近く気温が上昇すると、雪の降り始めが遅く、降り終わりが早くなり、雪の降る期間が短くなると考えられます。その結果、ひと冬で降る降雪量は大幅に減少するでしょう。100年後、北陸地方の総降雪量は、12月、1月、2月、いずれの時期も大きく減少し、現在と比べると3分の2から半分程度になると予測されます。

季節の変化「12月は秋」

現在、降雪量の多い時期は、12月から2月上旬までですが、100年後には1月にピークを迎えた後は、すぐに減少し、降雪量の多い時期はかなり限定されると予測されます。厳冬期の山沿いでも、雪は数センチしか降らず、平野部では全く降らない、積もらない年もあると予測されます。地球温暖化の進行は、日本の四季を変えることになるでしょう。12月は秋で、1月から2月前半が冬、2月後半は春へと季節変化するイメージです。

増加する局地的な大雪

災害を引き起こす大雪には2種類あります。一つは、38豪雪、56豪雪、平成18年豪雪のように、冬季を通した大雪のこと。このような豪雪は20~30年に一度の稀な現象です。もう一つは、短時間(一晩、一日)で降る大雪、いわゆるドカ雪で、これが近年増加しています。地球温暖化と大雪の関係は複雑で、空気中の水蒸気量の増加や日本海の海水温の上昇など、大雪をもたらす要素も含まれているのです。温暖化でひと冬に降る雪の総量は減少しますが、局地的な大雪、ドカ雪は増加すると予測されています。

平地は大雪ではなく大雨に

地球温暖化によって、海水温が上昇します。その結果、寒気の吹き出し時に、現在よりも多量の水蒸気が大気に供給されることになり、今よりも発達した雲が上空に流れ込むことになります。但し、温暖化によって気温も上昇しているので、沿岸部では発達した雲から降るものは雪ではなく雨になります。つまり、冬型の気圧配置が強まり平野部では大雨が降ることになります。一方、気温が0℃未満となる標高の高い山は大雪となる所もあります。冬に大雨警報と大雪警報が、同時に発表されることが考えられるのです。

今冬の北陸での大雪の要因

東太平洋赤道域の海面水温が低くなるラニーニャ現象が、偏西風を日本付近で南に蛇行させ、強い寒気が南下しました。そして、向きの違う冷たい風が日本海海上でぶつかったことにより、雪雲が発達する「日本海寒帯気団収束帯」と呼ばれる現象が発生しました。この活発な雪雲の列が北陸地方に集中的に流れ込み、今回、短時間で降雪量が増加したものです。なお、「日本海寒帯気団収束帯」による活発な雪雲は、局地的に流れ込むため、同じ北陸地域でも、場所によって積雪量に大きな違いが生じました。

<豆知識> 北陸に大雪をもたらす意外な要因…朝鮮半島北部の山

冬型の気圧配置が強まり、大陸からの寒気の吹き出しが強くなると大雪になります。これとは別に、大陸から吹く北西の季節風と朝鮮半島の地形の影響で大雪につながる現象があります。大陸から吹く北西の風が、朝鮮半島北部の標高の高い山々を迂回して二手に分かれ、日本海で合流します。風が合流する付近では上昇気流が発生し、雪雲が発達。これを日本海寒帯気団収束帯といいます。この雪雲が陸地に流れ込み停滞すると大雪が発生します。2018年2月の福井県や石川県加賀地方の豪雪も日本海寒帯気団収束帯によるものです。