[コラム]北陸の気候から考える地球温暖化

温暖化と秋の味覚

秋の味覚からみる地球温暖化。地球温暖化、気候変動の影響は、様々な食物に及んでいます。

村田 光広 氏(むらた みつひろ)
株式会社村田気象予報士事務所代表取締役
1968年生まれ、気象予報士
【テレビ出演】
福井テレビ「ライブニュースイット」(月〜金曜日)

❶ 秋刀魚の不漁が続く

サンマの漁獲量は、年々減少しています。水産庁は、2021年のサンマ漁が3年連続の記録的な不漁になる見通しを発表しました。2021年の漁獲量は過去最低となった2020年を少し上回るものの、2019年を下回る予想です。
激減の原因は、回遊するサンマが日本の漁場にたどり着く前に中国や台湾が漁獲するためとの見方もありますが、温暖化による海水温上昇の影響も指摘されています。例えば海水温は、この100年間で、日本海で約1.5℃、太平洋側で0.9℃上昇しています。全世界平均が0.54℃の上昇ですから、日本周辺の上昇率は高いのです。これは、黒潮の暖かい水の影響を受けやすいためと考えられています。サンマの漁獲量が今後も減少する可能性が高く、マグロ同様、国際的な管理も必要になりそうです。

さんま水揚量<全国さんま棒受網漁業協同組合>

日本近海の海域平均海面水温(年平均)の上昇率(℃/100年)<気象庁>

❷ マツタケが食卓から消える?

現代は、生命が地球に誕生して以降、6度目の大量絶滅時代とも言われており、この大絶滅は,過去のものと比べて速度が速く、その主な原因は人間活動による影響だと考えられています。
2020年7月に国際自然保護連合(IUCN)が公表した「レッドリスト」(絶滅のおそれのある野生生物の種のリスト)では、調査した約 12万種のうち、3万2411種の生物に絶滅の危惧があるとされ、日本人に身近な食材でもあるマツタケも、絶滅危惧種に指定されたのです。
マツタケはアジアからヨーロッパにかけて広く生育していますが、世界各地で森林破壊や温暖化などによる環境の悪化などによって生育量がこの50年で30%以上減少したと指摘されています。秋の味覚の王様は、食卓から消えてしまうのでしょうか?

❸ ミカン生産地は東北まで北上

農林水産省は、温州みかん栽培に適する地域の年平均気温は、15~18℃の範囲としています。この温度域は、関東以南の太平洋側、瀬戸内海の沿岸部および九州沿岸部が主に該当し、現在の温州みかんの主産地とおおむね一致しています。ただ、温暖化が進行すると、温州みかんの栽培適温となる地域は本州の日本海側にも出現し、2030年代には新潟平野まで到達、2060年代には東北南部の沿岸部まで広がると予想されています。地形や降水量の影響も考慮する必要がありますが、気温のみを考えれば、関東平野でも十分に栽培が可能となると言われています。一方、現在の温州みかん主産地のほとんどは、2060年代、高温になりすぎて栽培が難しくなると予想されています。果物の産地が大きく変化しそうです。

<豆知識> 台風の迷走

台風の進路<気象庁資料より作成>

台風の上陸というと、九州南部や四国南部、紀伊半島など太平洋側のイメージがありますが、必ずそうなるとは言いきれません。
2010年台風9号は、東シナ海から日本海に抜けて福井県敦賀市に上陸したのです。非常に稀な進路ではありますが、北陸地方に上陸する可能性もあるのです。
また、台風は北上してきて日本付近に来ると、偏西風に乗って北東方向に進むことが多いのですが、2018年の台風12号は、西寄りに進みながら北上、日本に上陸した後も西に進み、その後南下し 迷走しました。台風が 同時に2つ、3つ現れると迷走することがあるのです。
台風情報があるときは、注意してください。