[コラム]北陸の気候から考える地球温暖化

夏の猛暑と温暖化

近年は夏の猛暑が続き、熱中症の被害も多くなっています。
夏の猛暑と温暖化の影響について考えます。

村田 光広 氏(むらた みつひろ)
株式会社村田気象予報士事務所代表取締役
1968年生まれ、気象予報士
【テレビ出演】
福井テレビ「ライブニュースイット」(月〜金曜日)

❶ ダブル高気圧

夏になると日本列島は太平洋高気圧に覆われます。加えて、さらに上空高い所にもう一つの高気圧があって大陸から日本付近に広がってきます。この高気圧をチベット高気圧と言います。
太平洋高気圧とチベット高気圧は広がる高度が違うため、同時に張り出すと上空で重なり合って“ダブル高気圧”となります。二つの高気圧が非常に背の高い一つの高気圧のように働き、強い下降気流で空気が圧縮されることにより雲が出来にくく強い日差しに照らされ、強い下降気流で厳しい暑さとなります。
しかし、近年の異常な温度上昇は、高気圧の勢力だけでは説明ができないのです。

❷ 猛暑は温暖化の影響

一昨年、気象研究所、東京大学大気海洋研究所、国立環境研究所などの研究グループは、3年前(2018年)の記録的猛暑(*)について温暖化の影響であると発表しました。
研究グループは、、温暖化が起こらなかった場合と温暖化が進んだ場合の気候変動の比較をイベントアトリビューション(*)という手法を用いて, スーパーコンピュータで膨大な気候パターンを計算してシミュレーションを行いました。
この結果、温暖化がなければ3年前の記録的猛暑は起こることが無かったと結論づけ、日本の異常気象について温暖化の影響を証明したのです。

*2018年の記録的猛暑
埼玉県熊谷市で日本歴代最高となる41.1℃、新潟県では胎内市で40.8℃など、北陸で観測史上初めて40℃以上を観測。石川県でもかほく市で39.2℃、志賀町で39.1℃を観測。

*イベントアトリビューション
個々の異常気象に対して、地球温暖化がどの程度影響を与えていたかを定量的に評価するアプローチの総称。

❸ 猛暑日が激増

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が2013年に公表した第5次評価報告書のRCP8.5シナリオ(温室効果ガス排出量が最も多いシナリオ)に基づいて気象庁が行った気候シミュレーションによると、21世紀末、石川県では年平均気温が100年で約4℃上昇。これは、現在の鹿児島市と同程度の気温です。更に、猛暑日は100年で20日程度増加、真夏日・夏日・熱帯夜については、それぞれ60日も増加すると予測されているのです。温暖化が猛暑のレベルを更に上げると考えられます。

❹ 熱中症患者数が倍増

国立環境研究所によると、年平均気温がそれほど上がらなくても、極端に暑い日が増えれば、熱中症患者数も増加すると予測されています。
気温上昇があまり大きくない気候モデルの予測では、2100年になると患者数は現在の2倍に。
また、もう少し大きな気温上昇を予測するモデルの場合は、2倍に収まらず、地域によっては3倍、4倍になることも予測されているのです。熱中症による被害がこれまで比較的少なかった北日本や若い世代にも広がるなど、影響がさらに大きくなる恐れがあります。温暖化を止める努力と熱中症などへの対策を急ぐことが求められています。

<豆知識> 熱中症警戒アラート

今年から「熱中症警戒アラート」の運用が始まりました。
これは、熱中症の危険性が極めて高い場合に、熱中症予防の行動を促すための情報です。
気温、湿度、照り返しなどの熱(輻射熱)などから計算し求めた暑さ指数が発表の基準となり、この暑さ指数が33℃以上になると、熱中症警戒アラートが発表されます。
都道府県ごとに発表されますので、テレビなどで情報がある場合は熱中症に厳重な警戒が必要です。
また、環境省や気象庁のホームページでも確認できますし、環境省のメール配信サービスに登録すると情報を入手することもできます。