暮らしのなかの身近な放射線

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放射線の具体的な利用例

その1. (強い)放射線でモノの性質を変える!❷全く別の分子を接ぎ木する(グラフト重合)
  • ボタン電池

  • エアフィルター

  • ウラン・レアメタル捕集剤

  • など

 プラスチック膜や不織布などの高分子基材に放射線を照射し、内部のところどころに生じた活性点が「活きて」いる間に反応液に浸し、その活性点に新しい機能性官能基を持つ分子を共有結合させることができる。
 その際、1個だけではなく多数の機能性分子が活性点からグラフト(接ぎ木)鎖として重合・成長するように設計することがポイントで、基材の機械的強度や化学的安定性などの特性を保持したまま、電導性や特定の分子の吸着性など、基材の本来の性質とは全く異なる様々な新しい機能を付与することができる。

➡応用例1:ボタン型電池の電導性隔膜(セパレータ)
 優れた絶縁体であるポリエチレン膜に電導性を付与し、ボタン電池用隔膜として広く使われている。最近では、燃料電池などへの応用を目指し、高性能で高耐久性の新しい電解質膜の研究開発も進められている。

 さらに、東京電力福島第一原子力発電所事故の被災地域の復興促進に向けて、セシウム(Cs)イオンを選択的に吸着するリンモリブデン酸基を担持した繊維状(不織布)捕集材が開発され、水中に微量に溶存するCsを除去することで飲み水の安心を確保するセシウム除去用給水器として市販されている。

➡応用例3:ウラン・レアメタル捕集材
 オイルフェンス用不織布として利用されているポリエチレンやポリプロピレンなどの既存の高分子材料を基材として、グラフト重合で特異的な吸着機能を付与することにより、海水や温泉水中に微量に含まるウランやチタン、バナジウムなどの希少金属の捕集・回収が可能である。沖縄県沿岸部での海水ウラン捕集や群馬県草津温泉での温泉水からのスカンジウム捕集などの実証実験が行われている。